都市再開発とは?法律・制度・事例・課題をわかりやすく解説

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都会のオフィス・ビル群

都市再開発とは都市再開発

出典:PIXTA

駅前に完成した真新しい高層ビルを見上げ、この場所は以前どんな街だったのだろうと感じたことがある人は多いのではないでしょうか。

 

都市再開発とは、老朽化した建物や機能が失われつつある街区を、計画的に建て替え・整備することで、都市としての機能や安全性を更新する取り組みを指します。単なる「建て替え」ではなく、道路や公園といった公共施設の整備まで含めて街区全体を見直す点が特徴です。

 

なぜ都市再開発が必要なのか

日本の多くの都市部は、高度経済成長期に建てられた建物が集中しており、築50年以上を経過した建築物が少なくありません。老朽化した建物は耐震性が低く、地震や火災の際に被害が拡大しやすいことが懸念されています。また、道路が狭く消防車が入りにくい密集市街地も多く残っており、防災面での更新が急務となっている地域が存在します。

 

都市が抱える主な課題(老朽化・密集市街地・防災リスク)

具体的には、老朽木造建築物の密集、狭小な敷地が入り組んだ権利関係、公園・広場といった避難場所の不足などが挙げられます。これらの課題は個々の建物単位では解決が難しく、街区単位でまとめて整備する必要があるため、都市再開発という手法が用いられています。

 

都市再開発の目的

都市再開発の目的は、老朽建築物の更新や防災性の向上だけではありません。敷地を共同化して高度利用することで、公共施設用地を生み出したり、商業・住宅・オフィスなどの機能を集約して街の賑わいを取り戻したりすることも重要な目的の一つです(※)。

 

※:”国土交通省「都市:市街地再開発事業」”参照

 

都市再開発法とは都市再開発法

出典:PIXTA



「都市再開発」と聞くと抽象的な概念に思えますが、その裏側には具体的な法律の枠組みが存在します。都市再開発の多くは、都市再開発法という法律に基づいて進められています。

 

都市再開発法が制定された背景

都市再開発法は、1969年(昭和44年)に公布・施行された法律です(※1)。高度経済成長期に都市部の建物の老朽化や密集化が進んだことを背景に、それまで別々に運用されていた「防災建築街区促進法」や「市街地改造法」の仕組みを統合し、市街地の計画的な再開発を進めるための法律として整備されました(※2)。

 

※1:”e-Gov法令検索・日本法令索引「都市再開発法」”参照

※2:”不動産事業者コラム「都市再開発法とはなにか」”参照

 

都市再開発法の基本的な仕組み

同法は、市街地の計画的な再開発に関する事項を定めることで、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図ることを目的としています。特に、権利変換方式による「第一種市街地再開発事業」と、用地買収方式による「第二種市街地再開発事業」という2つの事業手法を規定している点が大きな特徴です(詳しくは次章で解説します)。

 

都市再開発法に基づく支援・補助制度

市街地再開発事業を実施する地方公共団体や事業者に対しては、国から社会資本整備総合交付金などによる財政的な支援が行われています。この交付金は、市街地整備をはじめとする複数の個別補助金を一つに統合したもので、地方公共団体が作成する計画に基づいて交付される仕組みです(※)。

 

※:”国土交通省「社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金」”参照

 

市街地再開発事業とは

市街地再開発事業

出典:PIXTA

都市再開発法という枠組みを理解したところで、次に気になるのは実際にどのような手順で事業が進むのかという点です。都市再開発法に基づく代表的な事業手法が「市街地再開発事業」です。

 

第一種市街地再開発事業と第二種市街地再開発事業の違い

 

第一種市街地再開発事業は「権利変換方式」と呼ばれ、従前の権利者の土地・建物の権利を、新しく建設される再開発ビルの床(権利床)に等価で置き換える仕組みです。

 

一方、第二種市街地再開発事業は「管理処分方式(用地買収方式)」と呼ばれ、公共性が高く緊急性を要する事業などにおいて、いったん施行者が用地を買収・収用したうえで整備を進める点が異なります(※)。

 

※:”国土交通省「都市:市街地再開発事業」”参照

 

都市計画決定から事業計画認可までの流れ

市街地再開発事業は、まず対象区域について都市計画決定が行われ、その後に権利者らによる再開発組合等の設立、事業計画の認可、権利変換計画の認可といった手続きを経て、ようやく着工に至ります。大規模な事業では、この一連の手続きに10年以上かかることも珍しくありません。

 

権利変換とは

権利変換とは、従前の土地・建物に関する権利を、再開発後の建物の床の権利に置き換える手続きのことです。原則として等価で置き換えられ、権利者は新しいビルの中に自分の権利に応じた床を持つことになります。なお、高度利用によって新たに生み出された床(保留床)は、事業者が売却・賃貸することで事業費に充てられます(※)。

 

※:”国土交通省「都市:市街地再開発事業」”参照

 

土地区画整理事業との違い

土地区画整理事業も街区を整備する手法の一つですが、主に敷地の区画を整え直す「面整備」に重きが置かれており、土地の一部を提供し合う「減歩」という仕組みが用いられます。

これに対し市街地再開発事業は、狭小な敷地に複数の権利者がいる都市部において、敷地を集約して中高層の共同建築物を建てる点に主眼があり、地価の高い都市の市街地に適した手法とされています(※)。

 

※:”不動産事業者コラム「都市再開発法とはなにか」”参照

 

都市再開発の主な手法・取り組み

 

都市再開発 手法 取り組み出典:PIXTA

 

制度の全体像を理解したところで、実際にどのような場所で、どういった形の再開発が行われているのかを見ていきましょう。

 

駅前再開発

駅前は人の流れが集中する一方で、老朽化した小規模店舗や狭い道路が残っているケースが多く、都市再開発の対象になりやすい場所です。駅前広場や交通広場を整備し、バスやタクシーの乗降スペースを確保することで、交通の円滑化と街の玄関口としての機能向上が図られます。

 

密集市街地の防災街区整備

木造住宅が密集し、地震や火災の際に被害が拡大しやすい地区では、防災性の向上を目的とした市街地再開発が行われることがあります。狭小な敷地をまとめて不燃化された共同建築物を整備することで、避難路の確保や延焼の防止につながる街区づくりが進められます。

 

大規模跡地・工場跡地の再開発

工場や貨物駅などの跡地は、まとまった面積を確保しやすいため、大規模な複合開発の舞台になることがあります。後ほど紹介する大阪駅周辺の「うめきた」エリアも、貨物駅の跡地を活用した再開発の代表例です。

 

官民連携による複合開発

近年の都市再開発では、行政と民間デベロッパーが連携し、住宅・商業・オフィスといった複数の機能を一体的に整備する複合開発が主流になっています。単一機能の建物よりも、多様な用途を組み合わせることで、街としての賑わいや利便性を高めやすいことが背景にあります。

 

都市再開発の事例

都市再開発 事例出典:PIXTA

 

制度や手法を理解したうえで、実際の再開発がどのような形で街を変えてきたのか、具体的な事例を見てみましょう。

 

六本木ヒルズ(東京都港区)

六本木ヒルズは、第一種市街地再開発事業として整備された複合施設です。1986年に「再開発誘導地区」の指定を受けたのち、地区内の権利者による準備組織が設立され、1995年に都市計画決定、2000年に着工、2003年に開業しました。

 

当初約500件あった権利者のうち、約8割にあたる約400件が事業に参加しており、多くの権利者が関わった再開発として知られています(※)。

 

※:”森ビル「六本木ヒルズ 開発経緯」”参照

 

大阪駅周辺エリア(大阪市)

大阪駅北側に位置する「うめきた」エリアは、かつての梅田貨物駅の跡地を活用した大規模な再開発地区です。先行開発区域は2013年に「グランフロント大阪」としてまちびらきし、その後の2期区域は「グラングリーン大阪」として、2024年に一部が先行開業しました。オフィスや商業施設に加え、都市公園を中心とした「みどり」の空間づくりが特徴です(※)。

 

※:”大阪市「うめきた(大阪駅北地区)プロジェクト」”参照

 

地方都市における再開発の取り組み

都市再開発は東京・大阪のような大都市だけでなく、地方都市でも行われています。例えば富山市では、公共交通の活性化とあわせて中心市街地の再整備を進め、市内電車の環状線を新たに整備しました。これにより、駅と中心市街地の間の回遊性が高まり、沿線での民間投資も見られるようになっています(※)。

 

※:”国土交通省「国土交通白書(コンパクト+ネットワークの事例)」”参照

 

都市再開発のメリットと課題

 

都市再開発 メリット 課題出典:PIXTA

 

「再開発は街にとって良いことばかりなのか」と疑問を持つ方もいるかもしれません。実際には、メリットと課題の両面があります。

 

都市再開発によるメリット(防災性・利便性・資産価値)

老朽建築物が不燃化された共同建築物に置き換わることで、防災性の向上が期待できます。また、道路や広場といった公共施設が整備されることで、街の利便性が高まる点もメリットの一つです。加えて、再開発エリアの不動産は資産価値の面でも注目される傾向があります。

 

都市再開発で指摘される課題・デメリット(合意形成の難しさ、工事期間の負担、公共施設不足)

一方で、市街地再開発事業には多くの権利者が関わるため、合意形成に長い時間を要することが課題として指摘されています。工事期間中は仮住まいや仮店舗での営業を求められる権利者もおり、生活・事業への負担が生じます。また、周辺人口の増加に対して学校や公共施設の整備が追いつかず、後から不足が課題になる地域もあります。

 

都市再開発を進める際のポイント

 

都市再開発 ポイント出典:PIXTA



これまで見てきたように、都市再開発は制度・手法ともに大掛かりな取り組みです。最後に、実際に進めるうえで押さえておきたいポイントを整理します。

 

権利者との合意形成を丁寧に進める

多くの権利者が関わる再開発では、それぞれの生活や事業への影響が異なるため、一律の説明だけでは合意形成が難しいことがあります。個々の事情に配慮しながら、時間をかけて対話を重ねる姿勢が求められます。

 

行政・デベロッパー・再開発コーディネーターなど専門家との連携

都市再開発は、行政・デベロッパー・建設会社に加え、権利者と行政の間に立って調整を行う再開発コーディネーターなど、多様な専門家が関わって実現しています。それぞれの専門性を活かした連携が、事業を着実に前進させる支えになっています。

 

長期的な街の将来像を関係者で共有する

再開発は完成後も何十年と使われ続ける街をつくる取り組みです。目先の建て替えだけでなく、将来の人口構成や産業の変化まで見据えた将来像を、行政・事業者・住民が共有しながら進めていくことが重要です。

 

都市再開発を理解してまちの未来を読み解く視点を持とう

 

都市再開発 未来出典:PIXTA

 

都市再開発とは、老朽化した街や防災上の課題を抱えるエリアを、法律や制度に基づいて計画的に作り直す取り組みです。都市再開発法や市街地再開発事業の仕組み、駅前再開発や跡地開発といった手法、六本木ヒルズなどの事例を押さえておくことで、ニュースで見かける再開発の話題への理解が深まります。一方で合意形成や公共施設整備など課題も多く、行政・デベロッパー・コーディネーターといった専門家同士の連携が欠かせません。制度と事例を参考にしながら、地域の実情に合わせた都市再開発の視点を持っておくことが重要です。

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