駅前再開発事例を紹介|成功事例と失敗事例から学ぶまちづくりのポイント
駅前再開発とは
出典:PIXTA
駅前再開発と一口に言っても、その目的や進め方は地域によってさまざまです。まずは基本的な仕組みと、計画が動き出す背景から見ていきましょう。
駅前再開発の目的
駅前再開発の目的は、単に新しい建物を建てることではありません。老朽化した建物が密集し、防災上のリスクを抱えるエリアを安全な街並みに変えること、そして人口減少や商業施設の郊外移転によって空洞化した中心市街地に、再び人の流れを取り戻すことが主な狙いです。あわせて、駅前という限られた土地を有効活用し、オフィスや住宅、商業施設を集約することで、税収の確保や雇用の創出につなげる狙いもあります。防災性の向上と賑わいの創出、この2つを両立させることが、駅前再開発が目指す姿だといえるでしょう。
駅前再開発が進む背景
駅前再開発が全国各地で検討されている背景には、人口減少と少子高齢化があります。地方都市を中心に、車社会の広がりとともに郊外に大型商業施設が立地し、駅前の商店街から人が離れていく現象が長く続いてきました。加えて、駅前の建物の多くは高度経済成長期に建てられたものが多く、老朽化や耐震性の不足が課題になっている場合もあります。こうした状況を受け、国や自治体は中心市街地への機能集約を促す施策を進めており、これが駅前再開発の後押しとなっています。
駅前再開発計画の主な流れ
駅前再開発は、地権者や地元商店会などによる勉強会や準備組合の設立から始まることが一般的です。その後、再開発組合を設立し、都市計画決定や権利変換計画(建物を壊して新しく建て直す際に、従来の土地・建物の権利を新しい建物の床に置き換える手続き)の認可を経て、解体・建設工事へと進みます。計画から完成まで10年前後かかる場合も少なくありません。長期にわたる事業だからこそ、初期段階での需要予測や地域合意の精度が、その後の成否を左右するといえます。
駅前再開発の成功事例
出典:PIXTA
まちの顔として注目を集めている再開発の実例から、どのような発想や工夫が成功につながっているのかを見ていきましょう。
DeNA BASEGATE横浜関内 グランドオープン(関内駅前再開発)
JR関内駅前では、三井不動産を代表企業に鹿島建設、京浜急行電鉄、DeNAなど8社が参画する大規模プロジェクト「BASEGATE横浜関内」が、2026年3月19日にグランドオープンしました。オフィスや新産業創造拠点、飲食店を中心とした商業エリアに加え、旧横浜市庁舎の行政棟を保存・活用したホテルが一体となったミクストユース型の街区です。商業エリアには国内最大級規模となる小割飲食ゾーンも整備され、単なる商業施設ではなく、地域の歴史的建造物を生かしながら新しい賑わいを生み出す点が特徴です。複数の大手企業が役割を分担しながら参画したことも、事業の実現力を高めた要因といえるでしょう。
横浜市「関内・関外地区エリアコンセプトプラン」
横浜市は、関内駅周辺地区の将来像を示す「関内駅周辺地区エリアコンセプトプラン」を策定し、「国際的な産学連携」「観光・集客」をテーマとしたまちづくりの方向性を明確にしています。旧市庁舎街区の活用事業の内容が固まったことを踏まえて内容を更新し、地区全体でこれらの機能を誘導する方針を打ち出しました。行政が事業単体ではなくエリア全体の将来像を先に描き、そこに個々の再開発事業を位置づけていくという進め方は、駅前再開発を一過性の開発で終わらせないための重要な視点だといえます。
駅前再開発の失敗事例から学ぶ教訓
出典:PIXTA
華やかな成功事例がある一方で、思うような結果につながらなかった再開発も存在します。過去の教訓から、注意すべきポイントを整理します。
商業施設依存で集客に苦戦した事例
青森市の再開発ビル「アウガ」は、コンパクトシティの中核施設として整備されましたが、計画段階で見込んでいた大型百貨店の入居が撤退により実現せず、その後の商業テナントの確保にも苦労した結果、最終的に経営再建を余儀なくされました。商業機能だけに事業の採算を頼る構成は、消費動向の変化や競合施設の影響を受けやすく、リスクが大きいことがうかがえる事例です。
※”日経ビジネス電子版「西武も逃げ出した青森駅前再開発ビルの今」”参考
人口減少を考慮できなかった事例
秋田市中心部の中通一丁目地区では、商業施設・美術館・住宅などを組み合わせた再開発事業(総事業費135億円)が進められましたが、2012年7月に開業した商業施設は2014年3月に閉店し、その後新たな商業施設に入れ替わりました。大規模な再開発であっても、開業後の集客を長期的に維持することの難しさがうかがえる事例です。
※”自治体問題研究所「コンパクトで進み出した大規模開発、なぜ失敗するのか」”参考
横浜維持管理負担が大きくなった事例
愛知県岡崎市の康生地区・東岡崎駅前では、百貨店を核テナントとする第一市街地再開発事業が行われ、事業費は約76億3,000万円にのぼりました。しかし地域の購買力に対して商業施設の規模が大きく、その後核テナントとなった百貨店をはじめ主要な商業施設が相次いで撤退しています。建設時の投資規模だけでなく、地域の実情に見合った事業規模を見極めることの重要性を示す事例だといえます。
※”東洋経済オンライン「"名古屋や豊田より購買力が低い街"だったのに…76億円"ハコモノ再開発"が招いた「愛知の商業都市」の哀しい衰退」”参考
地方都市が参考にしたい身の丈にあった再開発事例
出典:PIXTA
大都市の大規模開発をそのまま真似るのではなく、自分たちの街の規模に合った再開発を選ぶ自治体も増えています。代表的な4つのタイプを紹介します。
コンパクトシティ型の事例
富山市は、公共交通の活性化とあわせて中心市街地に行政・医療・商業機能を集約する「コンパクトシティ政策」を進め、国のモデル事業にも選ばれています。市街地を無理に広げず、既存の公共交通を軸に生活機能を集める考え方は、人口減少が進む地方都市にとって参考になる方向性の一つです。
公共施設集約型の事例
長野県塩尻市では、中心市街地の再開発事業で図書館を核とした複合施設「塩尻市市民交流センター えんぱーく」を整備し、子育て支援や市民活動など複数の機能を1つの建物に集約しました。石川県野々市市の複合施設「学びの杜ののいち カレード」も同様に、図書館の集客力を生かして賑わいを生み出した事例として知られています。商業施設に頼らず公共施設を核にする発想は、身の丈にあった再開発の選択肢の一つといえるでしょう。
※”日経クロステック「図書館が都市戦略の要に、100万人の集客装置として注目高まる」”参考※”PPPまちづくり「交流拠点としての図書館を整備、野々市市」”参考
交通結節点強化型の事例
宇都宮市では、次世代型路面電車(LRT)「宇都宮ライトレール」の整備を契機に、駅周辺の再開発が動き出しています。LRT沿線では地価の上昇や商業施設の出店が確認されており、交通結節点そのものの利便性を高めることが、周辺エリアの再開発を後押しする効果を生んでいます。大規模な商業施設に頼らず、交通インフラの改善から人の流れを生み出す手法だといえます。
※”健美家「初年度から純利益黒字の宇都宮LRT、宇都宮駅の西側へ延伸の計画が進行中」”参考
民間活力活用型の事例
岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」は、10年以上活用されていなかった駅前の町有地を、公民連携(PPP)の手法で整備した事例です。図書館を含む官民複合施設「オガールプラザ」や、宿泊施設を備えた民間複合施設「オガールベース」などが順次整備され、人口3万人強の町でありながら年間80万人以上が訪れる拠点になりました。行政が土地を提供し、民間の企画力・資金力を生かして施設を整備する手法は、財政に限りがある自治体にとって現実的な選択肢の一つです。
※”PPPまちづくり「10年以上放置された駅前に、年間80万人」”参考
成功する駅前再開発に共通するポイント
出典:PIXTA
成功事例と失敗事例を比較すると、いくつか共通する視点が浮かび上がってきます。最後に、再開発を検討する際に押さえておきたいポイントを整理します。
地域課題を明確にする
再開発を始める前に、その地域が抱える課題が防災性の低さなのか、商業機能の衰退なのか、それとも人口流出なのかを明確にすることが出発点になります。課題があいまいなまま大型施設の建設が先行してしまうと、完成後に「誰のための施設か」がぼやけてしまいがちです。
身の丈にあった再開発を行う
地域の人口規模や購買力に見合った事業規模を設定することも欠かせません。大都市の成功事例をそのまま模倣するのではなく、自分たちの街の実情に合わせて施設の規模やテナント構成を検討することが、将来の維持管理負担を抑えることにもつながります。
官民連携で事業を進める
行政だけ、あるいは民間だけで事業を進めるのではなく、双方の強みを組み合わせる官民連携の手法が有効とされています。行政が土地や許認可の面を支え、民間が企画力や運営ノウハウを提供することで、事業の持続性が高まりやすくなります。こうした事業の設計には、まちづくりや都市計画に携わる専門家の知見も生かされており、地道な調整の積み重ねが再開発を形にしているといえるでしょう。
公共施設と民間機能を組み合わせる
図書館や子育て支援施設などの公共機能と、商業・住宅といった民間機能を組み合わせることで、単一の需要に依存しない施設運営が可能になります。公共施設ならではの安定した来訪者数が、周辺の商業テナントにとっての集客基盤になっている例も見られます。
エリアマネジメントを重視する
建物が完成した後、そのエリア全体をどう運営していくかという視点(エリアマネジメント)も重要です。イベントの企画や広場の活用、テナントの入れ替え調整など、完成後の継続的な運営体制を事前に設計しておくことが、長期的な賑わいの維持につながります。
駅前再開発事例から学び地域に合った計画を進めよう
出典:PIXTA
駅前再開発は単に新しい施設を建設するだけではなく、地域の課題を解決し、持続的なまちづくりを実現するための取り組みです。成功事例を見ると、地域ニーズの把握や官民連携、適切な事業規模の設定が共通するポイントとなっています。一方で、地域特性を無視した大規模開発や需要予測の誤りは失敗につながる可能性があります。再開発を検討する際は、成功事例と失敗事例の双方から学び、地域に適した身の丈にあった計画を進めることが重要です。