自治体の企業誘致とは、企業が地域内に工場・オフィス・研究拠点などを設置しやすくするため、自治体が補助制度や税制優遇、用地整備、相談窓口の設置などを行う取り組みを指します。
人口減少や地域経済の縮小が進む中、雇用創出や産業基盤の維持を目的として、多くの自治体が重要施策として位置付けています。
企業誘致は、企業数の増加そのものを目的とする施策ではありません。地域の将来像や産業構造を踏まえ、どの分野と結び付けるかを整理したうえで受け入れ方針を示す取り組みです。
重点産業を明確にしている自治体は、進出後の企業との連携や産業集積の形成まで視野に入れて取り組む傾向です。一方で、対象分野を広く設定している自治体は、立地条件の整備や相談窓口の充実など、幅広い企業が利用しやすい環境づくりに力を入れるケースが多く見られます。
企業側は、コスト・採用・取引環境など自社が重視するポイントを整理したうえで情報を見ることで、自治体の方向性や自社との相性を判断しやすくなります。
企業誘致は、雇用創出や税収増加にとどまらず、地域内の取引や新たな投資機会を広げる取り組みです。企業活動に伴う人の移動や消費が地域内で行われることで、経済の循環が生まれます。
そのため、多くの自治体では企業誘致を単年度の施策ではなく、中長期的な地域活性化の柱として位置付けています。産業構造の見直しや若年層の雇用確保など、地域の将来像と結び付けて制度が設計されるのが特徴です。
企業誘致は、地域経済の動きを継続的に生み出す政策として、地域活性化と密接に関係しています。
企業が進出先を検討する際、企業誘致に積極的な自治体は候補として意識されやすくなります。ここでは、そうした自治体がなぜ注目されるのか、その理由を確認してみましょう。
新拠点の立ち上げには、設備投資や移転費用など多額の初期コストが発生します。こうした負担を軽減できる支援制度を整えている自治体は、企業にとって資金繰りの不確実性を減らせる存在です。
初期投資のハードルが下がるほど、企業は進出判断をしやすくなり、結果として注目度が高まります。
企業誘致に積極的な自治体は、人が集まりやすい環境づくりに力を入れています。教育機関の整備や産業集積の形成に加え、住環境や子育て支援など、定住につながる施策も同時に進めている傾向です。
まちづくりと産業政策をあわせて進めている地域では、将来的にも人口が維持されやすく、人材が集まり、定着しやすい土台が整います。こうした環境があることが、進出先として評価される理由のひとつです。
出典:PIXTA
進出判断では、制度の有無だけでなく、自社の事業特性や中長期の計画と合うかどうかを見極めることが大切です。自治体ごとの条件や環境を具体的に確認することで、立地の適合度が明確になります。
企業誘致に関する補助金や税制優遇の内容は、自治体ごとに異なります。進出先の自治体を選ぶ際は、具体的な条件を事前に確認することが大切です。
企業誘致制度を活用する前提で進出計画を立てる場合は、自社の事業計画と条件が合致しているかを確認しておく必要があります。
交通アクセスと人材環境
交通アクセスは、家賃や土地価格だけで判断できる項目ではありません。賃料が抑えられていても、通勤交通費や物流費が増えれば総コストは上がります。拠点単体の条件ではなく、交通費を含めた全体費用で見る視点が重要です。
人材環境にも注目しましょう。人口規模だけでは判断できず、同業他社が多い地域では採用競争が起こり、募集を出しても人が集まりにくい場合があります。都市部では、賃金水準が想定より高くなるケースもあるでしょう。
重要なのは「人材がいる地域かどうか」ではなく、自社の条件で採用できる環境かどうか。進出前に見極めたいポイントです。
自治体ごとに、力を入れて誘致している業種や、地域の前提条件は異なります。自社の事業モデルが、その地域が想定している産業やインフラ環境と合っているかを見極めることが重要です。
たとえば、公共交通が弱い地域で車を持たない若年層の採用を前提にする場合や、渋滞が常態化しているエリアに物流拠点を置く場合、想定していた運営コストや採用計画に影響が出ることがあります。
制度や立地条件だけでなく、地域の前提と自社の運営方針がかみ合っているかを確認し、業種との相性を判断することが大切です。
企業誘致制度を活用する際は、支援内容だけでなく、制度に付随する条件まで含めて確認しておく必要があります。ここでは、制度利用にあたって特に注意したいポイントを確認してみましょう。
企業誘致の補助金や税制優遇には、雇用人数や操業開始時期、事業継続年数などの条件が設定される場合があります。自社の進出計画が変更になれば、支援対象外となる可能性もあるため注意が必要です。
制度を前提に進出計画を組む場合は、中長期で条件を満たしているかを確認するようにしましょう。
事業環境の変化に伴う撤退のリスクも、進出前に押さえておきたいポイントです。企業誘致制度には雇用や操業継続に関する条件が付くことが多く、条件を満たせなくなると返還や違約条項が発生する可能性があります。
さらに、自社だけでなく地域内の主要企業が撤退した場合も注意が必要です。地域に依存度の高い企業が離れると、取引量の減少や雇用環境の悪化が連鎖し、地域全体の活力が落ち込むことがあります。
その結果、これまで維持されていたインフラの縮小や人口減少が進み、事業計画に不可欠な環境が失われるリスクもあるでしょう。
ここでは、企業誘致に積極的な自治体を紹介します。力を入れているポイントと合わせて紹介しているので、ぜひ検討してください。
新潟市は、サテライトオフィスだけでなく本社機能の移転も対象とした企業立地支援に力を入れている自治体です。設備投資や雇用に関する補助制度が整っており、情報通信関連企業の進出も増えています。
特徴的なのは、進出前の視察費用を実質0円(※)で受けられる制度です。1社3名まで、交通費や宿泊費、ワークスペース利用料が補助対象となり、検討初期の負担を抑えて現地を確認できます。
市内には大学や専門学校が多く、学生数も多いため人材確保がしやすい環境です。東京から最短約89分(※)とアクセスが良く、オフィス賃料や住宅コストも比較的低め。首都圏や太平洋側と同時被災しにくいことから、BCPの観点でも注目されています。
※“新潟市企業誘致課 公式HP”参照
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<ここがポイント>
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北海道は、サテライトオフィス開設数で全国1位(110社)(※1)となっており、企業の分散が具体的に進んでいる地域です。
災害リスクの分散を目的とした動きに加え、札幌市を中心に本社機能の移転も進展してきました。近年は、感染症を契機として、地方型の新しい本社機能移転の動きも顕在化しています。
さらに、広大な敷地を確保しやすい点も特長です。苫小牧東部地域(苫東)は、約10,700ha(※2)の産業拠点として整備されています。分譲用地は5,500ha(※2)。大規模な用地取得も検討しやすい地域です。
さらに、国の優遇措置に加え、北海道および市町村の補助制度や税制優遇、政府系金融機関の融資制度も活用できます。立地相談はワンストップ窓口で受け付けています。
※1“北海道企業立地 サポートサイト”参照
※2“北海道企業立地 サポートサイト”参照
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<ここがポイント>
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兵庫県は、産業立地条例に基づき、体系的な企業立地支援制度を整えている地域です。新エネルギー、航空、ロボット、健康医療、半導体の5分野を重点対象としており、成長産業の立地を後押ししています。県と市町が連携した制度設計が特徴です。
設備補助の投資要件は1億円規模から対象となり、大企業だけでなく中堅・中小企業でも検討しやすい水準です。本社機能の移転や研究施設の新設・増設も支援対象に含まれており、製造拠点だけでなく経営機能や研究開発機能まで視野に入れた立地支援が整備されています。
※“兵庫県|「ひょうご立地支援」リーフレット”参照
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<ここがポイント>
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神戸市は、戦略産業を明確に定めて企業誘致を進めている自治体です。IT・コンテンツ、航空・宇宙、神戸医療産業都市、水素エネルギー関連の4分野を柱に、成長産業の集積を強化しています。神戸港を擁し、アジア主要都市と結ばれている点も特徴です。
支援制度では、賃貸オフィス入居時の賃料を最大4分の1補助(IT企業は最大2分の1)(※1)。建物取得時の補助や固定資産税の軽減措置も設けられています。分野と制度を連動させた設計が特長です。
有効求人倍率は1.0水準(※2)で推移しており、東京都区部や大阪府と比べて採用競争が過度に集中しにくい環境です。都市機能を備えながら、人材確保の現実性を見込める点が評価されています。
※1“神戸企業進出総合サイト”参照
※2“神戸企業進出総合サイト”参照
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<ここがポイント>
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長野県は、精密加工や電子技術を中心とした加工組立型産業が集積しています。情報機器や電子部品分野で全国上位の実績を持ち、製造業を基盤とした産業構造が特徴です。
立地支援では、工場向け助成金や本社移転支援、ICT向け助成制度を用意。地方拠点強化税制なども活用でき、立地段階から制度を組み込みやすい設計です。産業集積と連動した支援体制が整えられています。
日本の中央部に位置し、東西南北に延びる広域交通網を有するのも魅力です。既存の新幹線や高速道路に加え、リニア中央新幹線の開業により、東京・名古屋との移動時間短縮も想定されています。
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<ここがポイント>
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自治体の企業誘致に関するよくある質問をまとめました。
企業誘致は、自治体が企業の工場やオフィス、研究拠点などの立地を後押しする取り組みです。補助金や税制優遇だけでなく、用地整備やワンストップ相談窓口の設置なども含まれます。地域の将来像や重点産業と結び付けて設計される点が特徴です。
すべての自治体で同じ水準の補助金や優遇制度が用意されているわけではありません。企業誘致に積極的な自治体では制度が整備されていますが、対象業種や投資額、雇用人数、操業継続年数などの条件は自治体ごとに異なります。
進出を検討する際は、制度があるかどうかだけでなく、自社の事業計画と条件が合っているかまで確認する視点が重要です。
企業立地は、企業が自らの判断で拠点を新設・移転する行為を指します。企業誘致は、自治体が企業の進出を促すために制度や支援策を整える取り組みです。
企業側の行為か、自治体側の取り組みかという立場の違いによって呼び方が異なります。
企業誘致は自治体ごとに条件が異なる
企業誘致の取り組みは、自治体ごとに目的や支援内容、重視している分野が異なります。企業誘致の内容は一律ではありません。自社の事業内容や目的に照らし合わせながら、各自治体の特徴を個別に確認する姿勢が重要です。進出先の検討では、支援制度や立地環境、人材確保のしやすさなどを総合的に見極めましょう。